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込み合う車内、連休のためか家族連れも多い中、いつも通りに同時刻の同車両に乗り込む濃紺のスーツ姿の男がひとり。同時に乗り込んだ乗客に押されながら、車内真ん中辺りに落ち着いたところで、ゆっくりと電車が動き出す。いつもの女が乗り込んでくる次の駅を目指し。

その駅では、やや長身の、30前後と思しき女がホームへと降り立つ。左薬指にはプラチナの指輪がほっそりとした指に光っている。黒のカシミアのロングコートは踝近くまでの丈で、光沢のある生地は見るからに上質だと分かるだろう。身を切るような寒さにもかかわらず、ぴんと背筋を伸ばして電車の到着を待っている。程なくして、滑り込む電車が送り込む寒風に、合わせ目がひらりと靡き、ロングブーツの脛と、白い腿が一瞬だけ見える。

カーブに差し掛かるたびに車内は大きく揺れる。バランスを崩した乗客が鳴らす足音や子供の声が煩く響き渡る様を男は鬱陶しいという表情を浮かべる。しかし、やがて減速し始めた電車の動きに反応すると、もぞもぞと身体を動かし腕を天井へと突き出すと、斜め前に空いていた吊革へとその腕を伸ばして掴まる。

ホームへと入線し、その動きを止めた電車は、ゆっくりとドアを開け放ち、外気と共にホームで待つ乗客が雪崩れ込んでくる。

◇◇◇

ホームからぼんやりと見渡す車内は予想したよりもずっと混んでいるため、やや重い気分になると瞳を曇らせて、誰にも気付かれぬほどの溜息をひとつ吐いた。

「………!」
しかし、一瞬で全身が固まってしまうほどの衝撃を覚えたのは、見覚えのある紺色のジャケットを着た男が乗る車両が目の前に止まったため。彼はこちらなど見ていない。乗り込んでくる乗客へと視線を走らせている。まさか、私を探してなどいないと思うが、ちらちらと眼球を動かしていた。そこから視線を反らすことなど出来ずにいると、後ろの客に次々と背中を押され、気が付けば男の近くへと流されてしまう。


(間違いない)
数週間ぶりだが、あの男だと思えば、どうにかして流れに逆らおうと身を捩る。けれど普段より混雑した車内では、寧ろ男の方へと押されるだけで。まるで、つり革を掴む中年男に抱かれるよう、斜め向かいに対峙すれば、あの時を思い起こさせる香りが鼻腔を擽ってくる。視線を感じると、ほんの一瞬だけ顔を上げた。

彼は僅かに吃驚した表情を浮かべながら私を見下ろしていた。
「………」
彼と視線が合って何かを言いかけて開いた唇は、言葉を発せずに動けない。そして、すぐに俯いてしまう。視線の端で捉えた彼の表情が歪んだ笑みへと変形したのは気が付いていた。発車の揺れがそうさせたのか、それとも彼の方から近づこうとしているのか、落とした視線の先に居る男が徐々に近づいてくるように見える。

忘れかけていたはずなのに、胸が高鳴ってしまう。落とした視線の先には、まるであの時のあの行為を思い起こさせるような指の動きが窺える。此方へと伸びた彼の手は私まで届くことは無かったが、見せ付けるように左手の指先を動かして見せている。まるで私の乳房を掴み、揉みしだいてたあの時と同じような動きが。

嫌、とでもいうようにゆるく首を振ってみると、緩く巻かれた栗毛が頬を撫でる。私の思いなど関係なくして進む電車は、急カーブで一度ガタンと揺れ、弾みに男が居る方向によろめいてしまう。咄嗟につり革を掴もうとした腕は、宙を舞うだけだった。もう一方の肩と腕は、あろうことかあの男の上着にぴったりと寄り添っていた。頬はスーツの肩口に。

揺れが収まるまでのほんの短い時間が、何分間にも感じられる。暫くすると、まるで私を支えるようにしていた男の腕がもぞもぞと動き出す。左の手首が僅かに動く。掌をカシミアのコートに押し付けるようにして。淫靡な笑みを浮かべて見下ろす男が、耳にかかる髪にふぅっと息を吐きかけてくる。悟られないほどに視線を上げたつもりが、此方を見下ろす男の冷たい瞳と交錯してしまう。脚に力を入れて体勢を直そうとしたそのとき、脇腹に、伸ばされた手の温もりが柔らかく這うのにびくりと震え。それだけで、記憶が蘇るよう。胸が高鳴って、息を飲んで目を閉じる。吐息を感じる耳朶が充血していくのが分かる。そして、それを悟られないように顔を逸らして鞄の持ち手をきつく握り締めるのだった。



つづく
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はじめまして
ブログサーフィンをしていてこちらを見つけました
すてきで淫らな文章が綴られていて
どきどきしてしまいましたわ
またときどき伺わせていただきます
電車の中っていうシチュエーション 好きなんです
電車は…
痴漢された経験があるかどうかで、萌え・萎えの違いがくっきりらしいのですが、私も電車は大好きな設定です。妄想ですからね?(笑)

私も祥子サンのえっちな妄想を読ませていただきにあがりますね。

宜しくお願いします。

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